『上司は鑑定士!』~新人ハルの不動産ゼミ~

第5回|眺めは最高だけど…「崖の上の家」には、巨大な落とし穴が!?

とある不動産会社の新入社員ハルが、不動産鑑定士である上司・森田のやさしい解説で、
不動産にまつわる様々な知識を学んでいくシリーズです。
ハルと一緒に勉強してみませんか?

 

【登場人物紹介】

●佐藤ハル 24歳、不動産営業1年目。理屈より感覚派。
モットーは「わからないことは、すぐ聞く!」。

●森田ツトム 49歳、ハルの上司の不動産鑑定士。趣味はサッカー観戦と旅行。
難しい専門知識をわかりやすく説明するのが得意。

第5回:眺めは最高だけど…「崖の上の家」には、巨大な落とし穴が!?

 

高台に建つ家は、日当たりも風通しも良く、何より眺望が魅力。
でも、そんな「憧れの高台」には、鑑定士が青ざめるような「巨額のコスト」が眠っていることが……。

ハル
ハル
森田さん、見てください!
この高台の土地、街を一望できて最高です!
しかも下の平地より1,500万円も安いんですよ。

これぞ「掘り出し物」ですよね?

森田
森田
ハルさん、空を見上げるのはいいけど、まずは「足元」をしっかり見てごらん。
この高さ4メートルを超える立派な石積みの壁……。
鑑定士の目には、これが「時限爆弾」に見えることもあるんだよ。
ハル
ハル
えっ、石垣ですよ?
お城みたいでカッコいいじゃないですか!

1. その壁、本当に「安全」と言い切れますか?

 

森田
森田
最近、ニュースで大雨のあとに擁壁(ようへき)が崩落する映像を見たことはないかい?
ひとたび崩れれば、自分の家どころか、下の家まで巻き込む大惨事になる。

実は今、こうした「古い擁壁」を抱えた不動産は、市場で非常に厳しい目で見られているんだ。

ハル
ハル
えっ……。
でも、これは昔からある丈夫そうな石だし……。
森田
森田
そこがプロのチェックポイントだ。
この石積み、よく見ると「工作物確認申請」の記録がない「無許可擁壁」の可能性がある。

今の厳しい建築基準を満たしていない「既存不適格」な壁だと、建て替えの時に「全部作り直せ」と役所から命令されるんだよ。

ハル
ハル
作り直し!?
壁を作るだけなら、そんなにかかりませんよね?
森田
森田
いやいや。これだけの高さなら、解体と再構築で優に1,500万円、下手をすれば2,000万円超えだ。
土地の安さなんて、一瞬で吹き飛んでしまう。

鑑定士は「更地価格」から、この「将来の修繕コスト」をバッサリ差し引いて評価するんだよ。

💡 鑑定士の知恵袋:擁壁の「寿命」と「責任」
コンクリート擁壁の耐用年数は一般的に30年〜50年と言われます。もし崩落して近隣に被害を与えた場合、所有者は「無過失責任(過失がなくても責任を負う)」を問われる可能性が非常に高いのです。安く買ったつもりが、莫大な損害賠償を背負うリスクも……。

 

2. 鑑定士は「壁の悲鳴」を聞き逃さない

 

ハル
ハル
2,000万円!? 土地が安かった理由って、もしかして……。
森田
森田
そう。持ち主も「直す予算がないから安く売っている」のかもしれないね。

さらに怖いのは、地中にある「水抜き穴」が詰まっている場合だ。
大雨で土の中に水が溜まると、その水圧で壁が押し出される。
僕たちは現地のヒビ割れや孕(はら)みを見て、その予兆まで嗅ぎ分けるんだ。

ハル
ハル
うう……。お城の主になるつもりが、
借金と崩落の恐怖に震えるところでした。
擁壁
森田
森田
不動産鑑定は「夢」を見る仕事じゃない。

最悪のシナリオを想定して、「その土地が本当に耐えられる価格」を冷徹に導き出すのが僕たちの責任なんだ。

ハル
ハル
森田さん、頼もしすぎます……!

私、まずは自分の「財布の防波堤」を築くために
今日のランチ代を死守します!

森田
森田
ははは、その防波堤はすぐに決壊しそうだけどね(笑)。

ハル的まとめ

 

ハル
ハル
今回のまとめです!

●無許可擁壁のリスク:昔の石積みは今の基準を満たさず、家を建てる際に「数千万円の造り直し」を求められることがある

●崩落の社会的責任:擁壁が崩れて他人に被害を与えた場合、所有者は甚大な損害賠償責任を負う可能性がある

●鑑定士の視点:役所の記録(確認申請)の有無と、現地の劣化(水抜き穴、孕み、クラック)を照合し、潜在的な負債額を算出する

 


森田のビシッと一刀両断!

その「安さ」の正体は、崩落リスクの「前払い」。
不動産の真の価値は、表面的な美しさだけでなく、見えない「土台」に隠されている。

 

監修:森田 努

不動産鑑定士及び宅地建物取引士。

相続・遺産分割・担保評価・収益不動産を得意とする。上場企業の財務諸表評価の実績も多数。弁護士・税理士・司法書士・その他専門家と連携し、適正な不動産評価で課題解決を支援。YouTubeFacebook、Xにおける不動産情報も好評。

かんべ土地建物(株)には、経験豊かな不動産鑑定士が在籍しております。
「高台の物件を検討中だけど、擁壁の状態が心配……」といったご相談もお待ちしております。

👉 [不動産鑑定のご相談はこちら] https://www.kanbetochi.co.jp/appraisal/

 


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