メシとウンドウ

第5回「現代の我々は何を食べるべきか 〜ホモ・サピエンスの栄養摂取の特徴〜」

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このコラムはその中でも「メシとウンドウ」に関して、最新知見を交えながら情報発信してまいります。

ホモ・サピエンスの栄養摂取の特徴

飢餓に敏感である。

ヒトのDNAの多様性は他の霊長類に比べて異常に低いです。霊長類で約220種類確認されているのに対して、ヒトは生物学に見て4種類です。それは過去に大きなボトルネック、つまり極端に少人数に追い込まれた=絶滅の危機に瀕した形跡であるとされています。その計算式は物凄く複雑でここでは割愛しますが、その時期と場所は特定されています。それは19万年~12万年前南アフリカの海岸です。現在はピナクルポイントというリゾート地として有名な場所です。


ここの崖っぷちの洞窟から、焚き火や貝を捕食した痕跡が発見されており、個人的に研究者から聞いたのですが5,000人~10,000人のオーダーまで減少したそうです。気候変動が大きな原因です。
ホモ・サピエンスは約20万年前に発現しています。なので登場して早々にこの災難に見舞われたわけです。その記憶からか、炭水化物を摂ってインシュリンを分泌して、グルコースを細胞まで届ける強さだったり、余ったグルコースを余す事なく必ず中性脂肪として脂肪細胞に蓄えてしまう能力だったり、また腎臓は尿を濾す臓器と思われてきましたが、2回血液を濾過していて、実は2回目の濾過の時に血中栄養分を全て回収する機能を持っていてそれが物凄く強いとか、ホモ・サピエンスは強力に飢餓に対する防備機能を備えています。またそれが一番の特徴です。

最適化した結果、カラダにはそんなにエネルギーは蓄えられない。

この地球上で生物の大きさを決める要因は何かを追求する「重量生物学」という学問があります。それによると酸素や二酸化炭素や代謝分子、遺伝情報を担う分子が気中や液中をどのように輸送されるかどうかで、地球上での生物の大きさが決定されるそうです。とにかくヒトのカラダの大きさはこれ以上は大きくなれないそうで、諸々のサイズは確定され、結果肝臓で400kcal、骨格筋内に400kcal、合計800kcalしかグリコーゲン=エネルギーを蓄えられません。つまり通常状態のカラダは約半日分のエネルギーしか備蓄できないのです。また現在の地球は氷河期にあって、10万年ごとに氷期と間氷期を繰り返しています。直前の氷期がさほど厳しいものでなかったせいか、食物が身近にある生活が続いたようで、私たちはそれぐらいのエネルギー備蓄能力で最適化しているのです。

備蓄エネルギーがなくなったら。

その800kcalのエネルギーを消費した後は、筋肉を分解して肝臓でグルコース生産=新糖生を行い、それができなくなったら脂肪からケトン体が肝臓で合成されるようになります。その状態になったら飢餓の定義に当てはまってきます。ケトン体とはそれ自体もエネルギーになり、また脂肪の分解を促す物質でもあります。それを含めて絶食は5日までが限度とされています。この仕組みを利用した「ケトジェニックダイエット」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、あえて飢餓状態を続けるので、本人の筋肉量だったり骨密度などと関係してくるので、なるべくこの状態は続けない方が良いと思います。
アフリカの海岸で絶滅しそうになった記憶からか、私たちはグルコースが細胞に入る時や、脂そのものを摂取するときの「快感」という形で脳は感じ、渇望しやすくなっているんですね。美味しくご飯を頂いたあと、なんかこうほわーっとした感じがそれですね。遺伝的にこの感覚を物凄い快感に感じる系統があるらしく、肥満の隠れた原因であるとされています。

ホモ・サピエンスは基本、ヴェジタリアンで設計されている。

ご先祖は果実だけではなく種子または茎、球根、根茎、塊茎から炭水化物を摂取していた期間が約500万年~800万年が続いたので基本ヴェジタリアンで設計されています。これについては、ご先祖様であった猿人・原人の臼歯のすり減り具合いや、植物由来の炭水化物を主食としていた絶滅してしまった頑丈型猿人たちが100万年近くその種を繋いだことから間違いなさそうです。また地球に一番存在している元素を摂取するという戦略は最適だと思います。

結果絶妙なホメオスタシスを獲得した。

ホモ・サピエンスの生理機能は、太陽や地球や月の動きと実は関連しています。例えば朝太陽が登り視床下部を刺激するとグルカゴンというホルモンが分泌され、細胞に対して「エネルギーを生産して活動を始めよ」というかなり強い指令を出します。これに呼応するかのようにインスリンが分泌されてグリコーゲンを各細胞に届けて吸収させようとします。これが朝が同じ運動量でも体脂肪が燃焼しやすい理由です。なので朝、ランニングする人は先ほど述べた肝臓のグリコーゲン備蓄400kcalが空になっているので、おにぎりの半分くらい約80kcalくらい摂取して走るとより、体脂肪を燃やす状況が亢進されて体重を落とす効果が増進されたりします。逆に日没後2-3時間経つと体が消費モードから蓄積モードに入ってきます。通常の食事だと消化に2-3時間、脂質が多い食事だと消化に4-5時間かかるので、摂取カロリーが適正でもこの仕組みをわかっていないと、余計な脂肪増大に悩むことになります。これはまだまだ人間のホメオスタシスの一部分です。